【案内】小説『エクストリームセンス』について

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 小説『エクストリームセンス』のURLは、 http://ncode.syosetu.com/n7174bj/

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2009年12月16日水曜日

参考までに

 Value Exchange Systemの構想段階で、私が最初に描いたスケッチです。



 旧システムの機能をサービスとして切り出し、SOAによって疎結合されたシステム。それはインターネットを通じて他者にも提供される。今の言葉でいえば、クラウド・コンピューティングを私は目指していたんですね…
 実現されたシステムは、いくつかの制約のためにある種の下方修正をしなければなりませんでしたが、このスケッチの大半は実現されたといっていいでしょう。


 2007年の5月になると、RXDBやトランザクション ストリーム、ストック&フローという概念がシステム アーキテクチャーに盛り込まれました。しかし、XMLの積極的な活用は、今回見送られました。
 
 同じ時期の次の図は、システムへの期待(価値)を良く表しています。



 業務フロー、業務リスク、アクティビティと対応するWebサービス、BPM、リスク コントロール、そして将来は、ABC的活動把握。凄いですね! これこそ継続的改善基盤です。
 実際のシステムは、これよりもスペックダウンしましたが、このような大きな志のもと、私は開発チームを率いてきました。

2009年12月15日火曜日

新基幹システム 稼働開始

 本日、新しい基幹システムが稼働を開始しました。中期IT投資計画として、全ミッションを4年以上の歳月をかけて取り組んできました。これまでのミッションの中で、多くの困難に遭遇しましたが、多くの人々の英知によって、一つひとつ問題をクリアしてきました。そして今日、最終ミッションが終了しました。

 基幹システムの構想段階で、MicrosoftIBMリコーグループにご協力を頂きました。

 システム開発の工程全般においては、富士通グループにその中核を担って頂きました。

 オフショア開発で中国の北京富士通系統工程有限公司にプログラミングをお願いしたので、私が名前も知らない中国の方たちが、たくさんのコードを書いてくれたはずです。

 そして、我が社のユーザーの最終段階での努力と協力は、感動的でした。

 多くの方々に支えられて、基幹システムの開発プロジェクトはゴールを向かえました。
 プロジェクトの開発総指揮者として、すべての方々に感謝いたします。
 ありがとうございました。

 基幹システム、その名は、

 Value Exchange System

2009年12月12日土曜日

次期基幹システム(8)

 データ移行後の確認作業がすべて完了しました。関係者の皆さん、お疲れ様でした。
 私はこれから食事がてら軽く一杯やって帰ります。3日後の本番稼働が楽しみです…

次期基幹システム(7)

 データ移行が無事に終了しました。ユーザーが作成した移行用データの精度が良く、予定より4時間も前倒しで完了です。正直、ホッとしました。お昼ですし、ちょっと休憩です…

2009年12月11日金曜日

Avesta

 Transformationとは、2005年の8月から始まった中期IT投資計画の名称です。この計画は三つのフェーズで構成されています。
  • Mission 1 : ネットワークの再構築
  • Mission 2 : 社内IT基盤の再構築
  • Mission 3 : 基幹業務システムの再構築
 そして今、Mission 3が最終段階を迎えています。今日から明日にかけて、新システムへのデータ移行を行い、来週の15日には本稼働する予定です。4年4ヵ月におよぶ多くの人々の努力が結実する日が刻一刻と迫っています。

 しかし、私の関心は既に次へと向かっています。

 次期中期計画では、我が社にイノベーションを起こします。
 ひとつは、テクノロジーによる業務の革新です。そしてふたつ目は、ITに関するさまざまな思想を社に拡げていくことです。例えば、我が社の社長は、「予算とはコミットである」と発言していますが、これは明確な誤りです。こうした考えを、アジャイルな思想により修正しなくてはなりません。物事の本質が見えていない社員には、コンテキストモデルによる問題領域の関係分析という手法を教えなくてはなりません。形骸化した目標管理制度も、正さなければならないでしょう。課題や問題は山積しています。

 次期中期計画はまだ策定中ですが、計画の呼称だけは数年前から決まっています。

 Avesta

 古代ペルシアの"神話"を現代に再現したいものです…

2009年11月16日月曜日

次期基幹システム(6)-運用テストほぼ終了

 次期基幹システムの運用テストがほぼ終了しました。ほぼ、というのは、ユーザー側のテストがひとまず終了したということです。今後は開発会社が障害を修正し、ユーザーの確認がとれれば晴れて運用テスト終了となります。
 さて、これで第3コーナーは無事に曲がることができましたが、まだ、第4コーナー(次期基幹システムへの移行データ作成)、ゴール前の直線(データ移行)と気を抜くことができない状態です。特に第4コーナーは、失敗すればこれまでの苦労が台無しになる作業です。
 ゴールまで後1ヵ月、まだまだレースは続きます…

2009年11月7日土曜日

次期基幹システム(5)-運用テスト続報

 *このブログでの描かれているやり取りは、実際に行われたものと若干の相違があります。これは、記憶違い、わかりやすさのための修正、若干の脚色によるものです。

 次期基幹システムの運用テスト終了まで1週間となった昨日、関係者を集めた会議を開催し、残り僅かとなった期間における運用テストの進め方について説明しました。

 この前日、今回の開発を委託している会社の主要メンバーと私は、我が社の会議室で約2時間にわたる議論を行いました。議論のテーマを掻い摘んで話すと、テストをなかなか行おうとしないユーザーを、いかにすれば動かすことができるか? ということです。難しいですね… 人の意識を動かすというのは… しかし、期日は迫っています。次期基幹システムの稼働をさらに延伸することなど、議論の余地もありません。

 最初に議論された策は、より強力な業務命令を下す、というものですが、これには私が気乗りしませんでした。確かに怖い上司から「やれっ!」と命じれば、ほとんどのユーザーが手を動かし始めます。しかし、「脅し」では、場当たり的な対応により本当に必要なことが失われてしまう可能性が高くなります。つまり、とにかくテストの仕様書と成績書さえ提出してしまえばいい、という「ずる」によって、実態を伴わない見せかけのテストが行われてしまうリスクです。

 我々開発サイドが支援できることはないだろうか? これはそれほど長い議論にはなりませんでした。既に説明は尽くされ、サポートの窓口を用意し、委託会社のSEが我が社に常駐している中で、果たしてこれ以上何があるのか? ユーザーの主体性がすべてと言っても過言ではない運用テストにおいて、今以上に魅力的な支援策は、確かに見つけにくいものです。

 「んぅーん…」と空気が淀んだ時、私はユーザーの心理を想像しながら口に出して描画してみました。
 「自分の怠慢により成すべきことをやっていないことは、おそらく自分自身が一番よく知っていることでしょう… 自分は、自分の真実を知る唯一の存在なのですから… 関係者が集まった会議の場で、進捗が思わしくないと報告されれば、犯人捜しが始まるかも知れない。そうなれば言い訳を考えなければ… しかし、言い訳もそう簡単ではないと気付くはずです。開発側は、議事録や操作ログなどさまざまなデータによって武装しているので、そうしたものとの不整合を指摘されたら… 思いつきの嘘で通じる相手ではない… 困ったなぁ… どうしよう…」
 私は、もしこんな立場だったら私たちに何がして欲しい? と尋ねてみました。
 「やはり助け船が欲しいのでは?」
 「そうですよね。では、どんな助け船?」
 開発サイドの支援策は尽きている、と前段で議論しました。やはり、直球しかないのでしょうか? つまり、運用テストの重要性を説き続ける… しかし、それはもう十分にやってきたことです。

 議論が尽きたかに思えた時、営業担当が口を開きました。
 「グループウェアで各自の予定を把握しているのだから、空き時間に様子を見に行くとか… ダメですかね?」
 これがもしもアニメだったのなら、営業担当のセリフの後に、私の頭にエクスクラメーションマークの表示と「ピンポーン」という効果音が鳴ったでしょう。ブレイクした瞬間です。
 私は訪ねました。
 「全業務を支援するためには何人のSE(今回のシステムのシステム化業務設計者)が必要?」
 「4人です」
 「来週1週間、その4人を終日我が社に待機させることは可能?」
 「何とかします」
 「ではこういう案はどうだろう」
 私は続けました。
 「まず、SEを4人、終日我が社に待機させ、すべての業務に対して支援できる体制をとる。そして、ユーザーの予定をグループウェアで確認し、空き時間になったら当人のもとを訪れる。つまり、空き時間が生じるたびに催促を受けるわけだ。これは非常に強いプレッシャーになる。まさに借金の取り立てと同じ。この取り立てから逃れるための手段はただひとつ。返済計画の作成とその確実な履行。催促がたまらないと思えば、自ら何らかの解決策を提案し、またそれを実行していくのでは? さらに、まったく資金繰りのあてがないのなら、どうしたらいいでしょう? と相談してくるはず。ないものはない、と開き直る人には法的措置、すなわち強力な業務命令(怖い部長の怒鳴り声)によって強制執行する。また、先ほどの助け船が必要なユーザーも、個別に開発サイドと対話できるので、救済されるのではないか? どうだろう?」

 これがベストとは思っていません。しかし、議論の時間をそう長くとることはできません。この議論に参加したメンバー全員の合意によって、このやり方が採用されました。

 翌日の午後、システム開発の関係者全員が集まる会議が始まりました。私はマイクを片手に、まず、これまでのプロセスを振り返ることから語り始めました。プレゼンテーションのストーリーはこうです。
  1. 事実を振り返り、開発側の正当性をアピールことによって、ユーザー側の不当性を暗に示すことで一旦、悪玉ユーザーを追い込む。
  2. テスト成績書から定量的な実施状況を示し、全体に危機感を醸成する。
  3. 本稼働のための必須条件を示すことで、 明確なゴールがあることを明らかにする。つまり、成すべきことをやりさえすれば解決する問題であることを理解させる。
  4. 具体的なやり方を教える。
 そして、最後。最も重要な点は、これは押しつけではなく、ユーザーにはいつでも主体性を取り戻せるチャンスが与えられている点を強調することです。つまり、先の例えである「返済計画の作成」を行えば、我々は「その確実な履行」を見守るだけであることを理解してもらうことです。

 約40分。思ったよりも早く会議は終了しました。
 手応えはありました。
 この施策の成否は? 答えは来週早々に出始めます…

続く…

2009年10月16日金曜日

次期基幹システム(4)-運用テスト進行中

 基幹システムの運用テストは今日で9日目、今のところはほぼ順調です。
 エンドユーザーによる運用テストは、テストの品質レベルを維持することが重要ですが、これは要件開発と並ぶシステム開発工程の難所であると認識しています。品質保証のV字モデルにおいてエンドユーザーが介在する部分は、「何を作るか?(要件定義)」、「うまくできたか?(運用テスト)」を確認するシステム開発工程の要ですが、エンドユーザーと開発者の間に起こるさまざまな物事のギャップが、結果としてこのプロセスを難所としてしまいます。また、このプロセスの主体はあくまでもエンドユーザー(要求者)であり、開発陣ができることはひと言でいえば支援のみです。システム開発の委託契約が委任型になるゆえんもここにあります。
 さらに、エンドユーザーは「ずるさ」を持ち合わせています。この「ずるさ」の本質は主体性の欠如です。つまり、「やらされ感」とか、「誰かがやるだろう」とか、そうした一人ひとりの主体性欠如がプロジェクトを失敗に誘い込んで行きます。
 私は次期基幹システムの開発総指揮者ですから、この「ずるさ」と対峙しなくてはなりません。要件開発に対しては、RDRAを採り入れた新手法を武器に闘います。さて、運用テストでは何を武器にしたらよいでしょう?

 私は、それは「見える化」であると考えます。人間とは、自尊心や羞恥心という感情を持っていますが、これを刺激されると行動に結びつきやすくなります。つまり、全エンドユーザーの運用テスト状況を公開することにより、「自分もやらなくては」という動機付けを行うことが主な狙いとなります。また、テスト品質の評価など、見える化は非常に有益な武器となります。
 昨日、エンドーユーザー毎に、どの画面に何回アクセスしているかをまとめたレポートを配付しました。今朝ログを確認すると、その効果を確認することができました。私の戦術は取り敢えず成功したようです。しかし、まだ十分なテスト品質とはいえません。テストの深さが足りないのです。
 引き続き、見える化を武器に運用テストのPDCAを回していきたいと思います。

続く…

2009年10月5日月曜日

次期基幹システム(3)-運用テスト開始

 今日から次期基幹システムの運用テストが開始されます。システムの品質をユーザー自身の手によって最終的に検証するためのテストですので、ユーザーの主体的な取り組みが極めて重要なのですが、当のユーザーにとってはそれほど関心の高いことではない、というのが実際のところでしょうか… しかし、私としては有益なテストを実施しなくてはなりませんので、今回は運用テストの「見える化」によってユーザーのやる気を刺激したいと考えました。
 このシステムはWebアプリケーションですので、IISにアクセスログが残ります。誰がどのページにアクセスしたかが、ADのWindows統合認証によってログに記録されるというわけです。また、簡易的なBPM機能を有しているので、どのプロセスを誰がどの位処理したかがログに残ります。このふたつのログをユーザーとその所属長に公開することによって、各自の運用テストに対する取り組み具合を見える化しようという趣旨です。
 さて、運用テストはうまくいくのでしょうか? 今日から11月13日まで、ユーザーとの静かな闘いが始まります。

2009年9月25日金曜日

次期基幹システム(2)-システム コンセプト

次期基幹システムの開発に関する紆余曲折を語る前に、
私が描いた当初のシステム コンセプトを語りたいと思います。

【データベース層】
まず自論ですが、データには硬度があるので、硬いデータにはRDBで、
軟らかいデータにはXML(Extensible Markup Language)で対応することを原則とする、というもの。
つまり、データの構造と中身が変化することが少ない「硬度なデータ」はRDBで、
変化する「軟度なデータ」に対してはXMLで対応するということです。
しかし、データベースへのアクセスは一元化したいので、
XMLを扱えるRDBMSを採用することによって、
私が考えるRXDB(Relational & XML DB)を実現しようと考えたのです。

【ビジネスロジック層】
次にビジネスロジック層ですが、これにはSOA(Service-Oriented Architecture)により、柔軟性を持ったシステム構造を実現すると共に、
BPM(Business Process Monitor)機能を実装することにより、業務の継続的改善基盤を構築しようと考えました。
いうまでもなく、業務は時間経過とともに変化しますが、システムのロジックは手を施さない限り変化しません。
絶え間ない変化を受け入れるシステム、これがこの階層のコンセプトです。

【プレゼンテーション層】
再び自論ですが、業務にはストック系フロー系の2種類の業務があるので、
それぞれの特性に合わせたプレゼンテーション層を構築しようというのがこの階層のコンセプトです。
ストック系は、定型的な流れを持たず、さまざまな利用シーンの中で繰り返し行われる業務です。
たとえば、「商品データベースを参照する」というようなユースケースです。
フロー系は、前工程が後工程に影響を与えるという依存関係を持ったプロセスが集まった業務です。
たとえば、「契約情報に基づき商品を仕入れる」というようなユースケースです。
私はこの前提の下、ストック系には既存資産を生かした開発アプローチを、
フロー系には手組みによるアプローチをとろうと考えました。
つまり、ストック系にはExcelによるデータアクセスやSQL ServerのReporting Serviceを活用することにより、
アクセスロジックの構築や帳票開発の手間を省き、
フロー系は手組みによって、より業務にフィットしたものにしようというコンセプトです。

そして、このコンセプトの実現を追い求める中で、
いくつかの苦労を背負い込むことになるのでした…

続く…

次期基幹システム(1)-現在、運用テスト準備中

今日は、12月から本稼働する次期基幹システムのユーザー向け操作説明会を行っています。
構想からシステムテストまで2年弱の月日を経て、
現在運用テストの準備を行っているところです。

システムの構成は、物理3階層・論理3階層のWebアプリケーションです。
DB層にはSQL Server 2005、ビジネスロジック層とプレゼンテーション層にはIIS6.0。
APS.NET 2.0とNetCOBOL for .NETにより構築されています。

現在稼働中の基幹システムは、メインフレームのシステムであり、
その基礎部分は15年ほど前に開発されたものです。
それゆえ業務の変化によるシステム改定を重ねた結果、
ひと言でいえばスパゲッティ状態に陥っています。
そこで、いわゆるレガシー マイグレーションによって、
システムを最適化すると共にコストパフォーマンスを改善し、
データの再利用性を大幅に高めようというのが、
次期基幹システムの技術的コンセプトです。

開発費は3億円。我が社としてはかなりの投資額です。
それゆえプロジェクト責任者である私の責任は大変大きなものですが、
ここまで来るには紆余曲折がありました。

続く…