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2010年5月28日金曜日

多様化技術 - Diversified Technology

 ITコストを削減する、あるは費用対効果を高める。これらを実現する方法は、ひと言でいえば汎化にあると考えられます。例えばパッケージ ソフトウェア。企業が個性を捨て、ベストプラクティス、あるいは標準という名の特化から汎化への転換を受け入れることで、ひとつの資源を他社と共有することによるコスト削減を実現できます。
 クラウド コンピューティングのサービス種別は、IaaSからPaaS、SaaSと進む毎に汎化の度合いが増します。IaaSは、クラウド上のVMにどのような仕組みを載せるかをかなり広い範囲から選択できますが、セキュリティなどには一定の制限、つまり汎化を必要とします。そしてSaaSになると、出来合いのユーザー インターフェースなど、汎化がかなり進みます。一方、コストは汎化が進む毎に低下していきます。Salesforceアプリケーションなどはかなり柔軟性を持ったSaaSですが、それでも一定の汎化を伴うことに変わりはありません。結論として、個性を捨て汎化を進めることで、コストは削減できるということになります。
 しかし、コストの削減には限界があります。この限界点に達した時、企業の取るべき道は大きくふたつあると考えられます。ひとつは、イノベーションを起こす、あるいはイノベーションが起こるのを待ち、限界点がさらに低下するのを待つという消極的な方法。もうひとつは、コスト削減によって生じた内部留保によって追加投資を行い、相対的な費用対効果を高めるという積極的な方法です。
 私はここでひとつの仮説を持っています。企業競争に打ち勝つためにコストを汎化によって削減してきた企業が、コスト削減の限界点に達すると共に内部留保を蓄えた時、これまでの汎化ストレスを開放する形で特化を求め、結果として独自ソリューションの構築による競争力の強化を求めるのではないか? という仮説です。つまり、スクラッチ開発への回帰が起こるのではないか? ということです。
 しかしながら、伝統的な手法によるスクラッチ開発への回帰では、退化の道を進むことになります。そこで、既存資産を有効活用し、素早く、インクリメンタルに開発できる方法論が注目されるでしょう。具体的には、各サービサーが提供するWeb APIなどをラップする形でアプリケーションを構築し、それをIaaSに載せる。また、開発手法についてはアジャイルな価値提供プロセスが普及する、というようなトレンドです。
 また、例えば、自動化が進んだカメラが撮る者の感性を顕著化したように、汎化が進んだITを使いこなす能力-ITリテラシーの全社的向上が、これまで以上に競争力に大きなインパクトを与えるでしょう。
 Salesforce.comは、汎化によるコスト削減を企業に提供しましたが、Salesforceアプリケーションの価値を存分に得るためには、PaaSとしてのSalesforceを使い倒す能力が必要です。つまり、業務部門の業務設計や改善の能力、システム部門の開発力です。このふたつを携えSalesforceアプリケーションを利用すれば、その投資効果を極限まで引き出すことができるでしょう。
 脱・汎化、ITリテラシーの向上、どちらも私は「多様性」という言葉で包括したいと考えます。SaaSを使いこなすユーザーのリテラシー、SaaSをカスタマイズするシステム部門のリテラシー、各種クラウド サービスを最適にブレンドしてのシステム構築リテラシー。こうしたリテラシーによる特化された(個性化された)競争力の源泉。いうなれば、既存資産を上手に組み合わせて個性を築く「多様化技術」が、クラウド サービスが一定の成熟を得た年からその後数年間のトレンドを形成すると予見しています。
 「多様化技術 - Diversified technology」とは、数ある既存サービスをラッピングすることによって安価に素早く、インクリメンタルに個性あるアプリケーションを開発すること、あるいはパラダイムです。そして、多様化技術を支える中枢となるべき人材が、企業内に存在することがこれまで以上に重要になるとの仮説を持っています。

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