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2009年12月16日水曜日

小説『エクスプロラトリー ビヘイビア』(12)

 八月四日、金曜日、午前十一時。白石邸で沢木組建築工学部門のスタッフが人美の部屋の改装作業をしているころ、沢木と秋山、片山、岡林の四人は、松下名義で借り入れた葉山の一軒家に到着していた。一行は三台のワゴン車に分乗し、沢木がリストアップした機材とともにやって来たのだ。

 その家は白石邸から約八〇〇メートル、沢木の自宅からは約一二〇〇メートル離れたところに位置し、近くに小学校と幼稚園がある住宅街の一角にあった。道幅の広い道路沿いに建てられたその家は、道路よりも一段高くなっている土地にたたずみ、正面の玄関へはコンクリートの階段を少し登って行くのだった。家の正面には車が一台駐車できるスペースがあり、左側には小さな庭があった。そこには屋根までとどきそうな背の高い木が三本立っていて、二階のベランダを覆い隠すように枝葉が伸びていた。
 沢木たちが中に入ると、岡林は興味津々といった面持ちで、家の中を隅から隅まで探索した。
 玄関を入ってすぐ正面にはドアが二つあり、右の部屋はダイニングキッチン、左の部屋はリビングになっていて、その二部屋は間仕切りを挟んでつながっていた。二階には六畳の和室と四畳半の洋室が二部屋、計三部屋あり、ベランダへは和室から出るようになっている。
 探索を終えた岡林が、リビングルームにいるみんなのもとに戻って来た。
「なかなかいい家じゃないですか」
 岡林が感想を口にした。
「そうだな。よし、それじゃ部屋の割り当てを決めよう」
 沢木が指示を始めた。
「まず、メインの機材はこのリビングに設置する。二階の和室のベランダには各種アンテナを設置し、部屋の中には通信機器関係を置きラインをここまで引き込む。残りの二部屋は仮眠室に使い、一つは秋山さんと桑原さん用で、もう一つが男性用だ」
「それじゃ、後で僕が鍵を付けといてあげますよ。片山さんがのぞくといけないから」
 岡林は秋山の顔を見ながら冗談っぽく言った。
「ありがとう」
 秋山はそう言って微笑んだが、片山は岡林の額を軽くひっぱたいた。
「よし、機材の搬入から始めよう」
 沢木はそう言って手のひらを打った。
 未知の能力を探るための観測システムは、次ぎのような構成になっている。
 人美の部屋に設置されたPPSは、そこで発生するすべての電磁波をとらえ、そのデータはエアコンの屋外機内に仕込まれた送信機から本部に送られる。受信したデータは解析システムの中枢となる、IBM社製ワークステーション(コンピューター)で処理される。このワークステーションには、沢木たちが開発したASMOS用の処理回路、及び岡林により作成されたソフトが実装されている。ここでさまざまな処理が行われ、人美の脳波が抽出、分析される。

第二章へ 続く…

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